書籍『エンジニアの知的生産術』読書メモ

書籍URL: https://gihyo.jp/book/2018/978-4-7741-9876-7

所感

表題には「エンジニアの」とあるが、エンジニア特化というよりも、知的生産にまつわるあれこれを汎用的に解説するような内容だった。学び方・知識の整理の仕方、アイデアの生み出し方など、どんな場面でも応用の効く知識が多かったので、知的生産的な仕事に携わる人であれば誰でも参考になるのではないか。

総じて、読んでいて学びのモチベーションが湧いてくる良い本だった。

学習・知識の整理・アウトプットをルーティン化していきたい、と思っていたところだったので、良いタイミングで良い本に出会えてよかった。

以下は個人的に気になった箇所のメモ。

ゴールを明確に、短くする

「25分でここまで読む」など短く明確なゴールを設定することで、やる気を維持する。

ゲームのチュートリアルのように達成感を得る。

よく言われていることだけど、とても有効だと感じる。実践したい。

魚を与えるのではなく釣りの仕方を教えよ

先日のアクセシビリティカンファレンスでも耳にした言葉。

正解ではなく正解の探し方を教えることが大事。

そのためには自分が正解の探し方を言語化できていなければならないな。

学んだことを他人に話す

もし相手がポカンとしていたなら、うまく説明できていないということ。

うまく説明できるように自分で改善のサイクルを回す。

これによって自分の理解も言語化されて深まっていく。

公理は論理的に導かれたものではない

公理は直接経験から直感的に発見するもの

あっ、こういうパターンがありそうだ、と発見する

アインシュタインの考え方

論理的帰結ではなく経験から分かるもの、という感覚は確かに分かる。

「優先順位づけ」はそれ自体が難しいタスク

ここちゃんと認識しておくの大事。不確実な要素について検討していると、それだけで時間もかかるし疲れるし。

探索と利用のトレードオフ

過去の経験から一番良いと思う行動ばかりをしていると、より良い行動を見つけられない → 探索が足りない

未経験の行動ばかりをしていると過去の経験が活かせない → 利用が足りない

不確かな時は楽観的に

探索と利用のトレードオフを解決するための考え

悲観的な勘違い=マイナスに捉えて探索しない

楽観的な勘違いには後から気付ける。

最良の場合に何が得られるか?を考える

通知された は 緊急 ではない

これは本当にそう。勘違いしないようにする

時間でタスクを切る

タスクの切り方には、量で切る方法と、時間で切る方法がある

タイムボックス化

アイデア出しとか特にそう、もっと良いアイデアがあるかも?となって、いつまでも終わらながち

ポモドーロテクニック

  • 今日1日分のタスクリストを作る
  • タスクの大きさをポモドーロの個数で見積もる
  • 1ポモドーロの間はタスクの変更をせずに1つのことに集中する
  • もし自分または他人による割り込みが発生したらそれを記録する
  • 1ポモドーロ集中した状態を継続できたら、立ち上がって数歩歩くなどして視点を切り替える

ポモドーロで見積り能力を鍛える

1日8時間で16ポモドーロは出来ない。50m走のペースで1500mを走れないのと同じ。

1日にできるのはせいぜい4〜8ポモドーロ程度。

タスクを何ポモドーロでできるかを見積りつつ精度を上げると、限られた資源の使い所を考えるようになる。

ポモドーロテクニック自体は知ってたしやってたけど、見積もりの観点は持ってなかった。

単なる集中力向上や時間効率化のためのテクニックみたいな認識でいた。

時間が何にとられているかを明らかにするところからスタートする

作業からスタートしない、計画からもスタートしない

時間に対する非生産的な要求を退ける

記憶を鍛えるには繰り返しとテストが重要

一度学んだことを忘れてからもう一度学ぶと記憶に残りやすい。そしてただ繰り返すだけでなくテストをする方が良い。

テストをすると主観的な自信がなくなる(出来ないことが分かるため)が、客観的な成果は高くなる

知識を構造化する20のルール を元に自分で学習教材を作ると良い

散々言われていることだけど、繰り返すこと、アウトプットすることはめちゃ重要

あと難しすぎるものを覚えようとしないということが大事

読書とは「情報を見つける」だけではなく「理解を組み立てる」営み

有用な情報を見つける、インプットのイメージが持たれがちだが、本から得た材料と自分の経験などを組み合わせて構造化していく「理解を組み立てる」イメージも大事

「見つける」と「組み立てる」は分かれているのではなく連続的なグラデーション。状況に応じて主体的に選択すること。

理解を組み立てるための読書、という視点は意外と無かった。読書=インプットの時間、として捉えていた。でも本を読むことで理解を組み立てられる、という感覚は確かに言われてみれば分かる。

この視点を意識すると、読書への向き合い方や時間の使い方が変わってきそう。

本を読むときには目次や見出しに注目する

見出しには高いコストがかかっている。階層の深さ、目次を読んでストーリーが分かるか、内容とマッチしているか、など。

高いコストを掛けて整備されている情報なので、知識の地図を手に入れるうえで有用な確率が高い。

これまで目次を読み込むことはしてこなかったけど、確かにかなり有用な気がしてきた。事前に構造を頭に作ってから読めるのは非常に効率が良い。

本を読むときは図に注目する

図を作成するのは手間がかかる。つまり筆者が「手間を掛けても伝えるべき重要な情報だ」と考えて可能性が高い。

目次とも同じだけど、筆者がかけたコストを考えて読む視点はなかった。合理的だと思う。

1ページ2秒以下の見つける読み方と3分以上の組み立てる読み方

読む速度が速いほど得られる知識量は少なくなる。

時間を書けてじっくり読む組み立てる読み方の場合は書籍の選択の重要度が高くなる

当たり前だけど意識するの大事。

わからない理由の4分類

  • 用語の理解が不十分
  • 論理の筋道の理解が不十分
  • 問題意識の理解が不十分
  • 図解する必要がある

p.130

高田明典

理解は不確実タスク、挑戦の量で測るという手がある

  • そのテーマについて書いてある本に3冊目を通す
  • 三冊をそれぞれ1ポモドーロずつ読む
  • 時間を区切ってふせんに抜き書きを作る
    • 完了後には付箋が達成の証として手に入る

人に教えるための資料を作ることは記憶を強化する

実際に教えなくても資料を作るだけで効果がある。作った資料は後から自分で見返して復讐することにも役に立つ。

まず5分書いてみる

レポートや記事を書くときにまずはふせんに情報・アイデアを書き出す

100枚書く、と言っているが100枚書くのがどれくらいのタスクか分からないので、5分という時間で区切る

表札を作れるグループが良いグループ

p.163

KJ法ではグループ作成の段階では分類をしてはいけない。分類をする前にまず関係のありそうなものをグループにする。

グループ化のやり方が分からない場合は適当にグループを作って表札を作ってみる。内容をうまく要約できるグループが良いグループ。

KJ法を繰り返す

KJ法は一回やって終わりではなく、何度も繰り返すもの。時間を置いて再度やるのも良い。

KJ法を通した知識はよく耕された畑のようなものなので、新しい種がまかれてもよく育つ。

長期的に自分を鍛えるためにも、間隔を空けてインクリメンタルに改善していくのは効果的。

p.175

アイデアを思いつく3つのフェーズ、耕す、芽生える、育てる

  • 耕す:情報を集め、かきまぜ、繋がりを見出そうとするフェーズ
  • 芽生える:情報を寝かせて、アイデアが芽生えるのを待つフェーズ。管理ができない。
  • 育てる:生まれたアイデアを磨きあげていくフェーズ。

p.181~182

フレームワークは習慣性のある薬

適切なタイミングで少しだけ使えばとても有効だが、乱用し継続的に使い続けると有害

「探索と利用のトレードオフ」にも繋がる話

抽象概念を身体感覚に近づける

p.192

アナロジーで新しい発想を生み出す

例えば「売上を上げる」の「上げる」に対して「何のように上げる?」と問う。「凧あげのように上げる」と答える。

このメタファの空間で連想して新たな発想を生み出す。NM法。

p.196

クリーンな質問

https://listfreak.com/list/1871

p.197

暗黙知の2つの意味

問題の解決に近づいている感覚-tacit knowing Michael Polanyi

言語化するためには違和感に注目する

身体感覚や経験をもとに、辞書的な説明と異なる部分に注目する

KJ法の分類時にも、既存の概念やすでに言語化された理由で分類してはいけない

知識の拡大再生産戦略

  • 知識を使って時間を得て、その時間を知識獲得に投資する
  • 知識を使ってお金を得て、その時間を知識獲得に投資する
  • 知識を使って立場を得て、その立場を使って知識獲得をする

知識は外部から取り込むだけでは不十分

外の知識を取り込むだけでは差別化に繋がりにくい。

実際の応用の現場で必要に応じて生み出された知識は、流通しておらず価値の高い知識。

知識を持っていることではなく、新しい知識を生み出す力が、価値の源泉。